No pain, no gain. 4語4技法の表現テクニック

4語4テクニック No pain, no gain.、No cross, no crown. は文法プラス技法の英語の本領発揮。

English sayings speak volumes about English.
英語の諺(ことわざ)は英語を大いに語る

No pain, no gain.
(まかぬ種は生えぬ)

After good exercise, you may be reminded of the proverb: “No pain, no gain.” In that case, a little bit painful muscles and joints are a joyful reminder of your mind and body recharged, your health promoted. Among other things, those lessons which you have learned the hard way are gains for your pains. Only pains with no gains remain a pain in the neck.
(うんと運動した後、諺の No pain, no gain. を思い出すかも。そうならちょっぴり痛い筋肉と関節も活力を回復した心身、増進した健康を思って喜べるというもの。わけても、えらい目をして学んだ知恵は苦労のかいあっての収穫。ただし、全くの徒労は頭痛の種を残すだけですね。)

[問1]
以下4語の諺に使われている4つの表現テクニックを挙げなさい。
  1. No pain, no gain.
    (ことわざ:まかぬ種は生えぬ。)

英文が書けるためには文法力という英語をかみ砕く歯が必要、英文がうまく書けるためには英文のうまいへたがよくわかる、つまり表現レベルで英語を賞味できる舌が必要――あなたは英語とおいしく付き合っていますか。英語が母語(mother tongue)並のバイリンガルになるためには「舌」が必要ですよ。英語のハイテク=表現テクニックは英語の料理法――この料理法を習得するプロセスの中で「舌」ができてきますが、同時に「歯」もぐんと丈夫になりますよ、英語の文法と技法は奥で通じていますから。

「英語、ことわざ10選」が誕生するまでは、技法と言えば修辞学(rhetoric)程度のこと、レトリックと呼んでテクニックと呼ばないレベルの技法のこと、ライティングのテクニックと言えば、パラグラフの構成法、トピックセンテンスの活用、リンキング(linking)程度のことでお茶を濁してきました。確かに文章の組み立て方も大切ですが、各パラグラフを構成する文自体が拙ければ、内容がどうあれ、読む気をそいでしまう無価値な文章になってしまいます。この講座と出会うまで「表現テクニック」なる用語に出会うことさえなかったあなたは、英語の一人前は技法を駆使して英語を料理する、半人前は「料理法」を学んでいない、ということさえ思い当たらなかったわけですが、ここらで、No pain, no gain. 4語の4テクニックで、表現テクニックなる「英語の料理法」の真価に目覚めて欲しいものです。英語の諺は英語を大いに語る――簡潔の極み No pain, no gain. は英語を極めるのに何が必要か、雄弁に語っています。

[答]

  1. (rhyme。)
  2. noの強調反復(the repetition of “no” in an emphatic position)
  3. 体言止め(a conspicuous noun phrase left over after deleting the part before it)
  4. 並列(parataxis)

4技法の中で少しなじみなのは韻、「英語で俳句、俳句で英語」「英語、ことわざ10選-3.」で触れた parataxis(並列)はネイティブもなじみのない用語、ですが並列構造をよく使いますし、プロのライターなら巧みな並列の1文はパラグラフ全体を引き立てる主役を演じることのできる表現テクニックと心得ています。「体言止め」とはもちろん英語の体言止めで動詞との位置関係は日本語の体言止めと逆、「no の強調反復」同様私の命名です。

1. 韻

  1. No pain, no gain.
  2. No efforts, no results.
    (努力なくして成果なし。)

意味を変えずに形態を変えるのは変形(transformation)、意味を変えずに表現を魅力的にするのは表現テクニック――同じ趣意の a.、b. の a. が b. より魅力的なのは[pein][gein]の韻の力、換言すれば音を表現テクニックとする a. は b. ほど「おと」なしい文でないということ。韻と言えるほどぴったり音が揃わなくても、語頭(第1音節)「ef」、語尾「t」でスペルの揃った effort、effect の c. の方が b. よりやはり effective で attractive ということになりますね。

  1. No effort, no effect.
    (労なくして効なし。)

cross(十字架/試練)、crown(王冠/栄冠)が頭韻(alliteration:狭義では同じ語頭の子音[consonant]を持つ複数の単語が近接、隣接していること、広義では母音[vowel]も含める)を踏む d. は a. と同じ趣意ながら苦労の程度も得るもののレベルもぐんと高い。

  1. No cross, no crown.
    (ことわざ:試練なくして栄冠なし。)

c. が大文字の the Cross は「イエスの受難」、試練の程度も、栄冠のレベルもぐんと高くなって climax に至ると、

  1. No Cross, no Christ.
    (受難なくしてキリストなし。)

となりますが、pain → cross → Cross と苦難が大きくなり、gain → crown → Christ と得るものも神々しくなると気安く使える表現ではなくなりますから、e. が諺になるのはいばらの道。

  1. No pains, no gains.

No pain, no gain. にはその複数形 pains、gains の f. のバリエーションもあると言うより、本来「苦労/骨折り」の意味では複数形 pains、「利益」の意味では複数形 gains が基本ですから、文法レベルでは f. が基本で No pain, no gain. は f. の表現的展開。pain[pein]、gain[gein]のほうが pains[peinz]、gains[geins]より音がよくて表情もすっきりしている、pains、gains は少々野暮――というあたりで No pain, no gain. がより好まれるという次第。

2. no の強調反復

no の巧みな反復は即座に印象を刻みますが、この「巧み」の典型は文の強調の座(文頭·文末。)で no を反復する「no の強調反復」テクニック――この点を以下3文で例証してみましょう。

  1. There is no spectacularly good news though there is no fresh bad news.
    (新たに悪報もないが、とびっきりの朗報もない。)
  2. No spectacularly good news though there is no fresh bad news.
  3. There is neither spectacularly good news nor fresh bad news.

there is 構文2節の主語で no を反復した g.、主節の There is 省略、文頭·文末で no を強調反復した h. と neither...nor で no を2つとも使わない i. を比較すれば、no の反復はそれ自体が表現力と即座に納得できるでしょう。ところで no の反復テクニックの典型である「no の強調反復」の典型、つまり究極の「no の強調反復」はどういう表現形式になるかわかりますか。それは、1文に文頭と文末しかない、つまり1文が2つの名詞句で構成され、その2つの名詞句の先頭は各 no という究極的に簡潔な表現形式になりますね。そういう1文を例示すれば、文頭 No pain、文末 no gain、2名詞句(no pain、no gain)1文構成の例の諺。

  1. No pain, no gain.

ですからこの諺は no の強調反復の典型と言えるわけです。

no の巧みな反復には「no の強調反復」の他に no を頭にした2つ以上の語句を連ねる「no の連続反復」テクニックもあります。for no reason だけの j. より for no reason, for no specific reason、for no reason, for no purpose と連続した k.、l. の方が説得力がありますね。

  1. Is each human being endowed with creative power created for no reason?
    (創造力を授かった人間の一人一人は何の理由もなく創造されているのだろうか。)
  2. Is each human being endowed with creative power created for no reason, for no specific reason?
    (創造力を授かった人間の一人一人は何の理由もなく、特定の理由もなく創造されているのだろうか。)
  3. Is each human being endowed with creative power created for no reason, for no purpose?
    (創造力を授かった人間の一人一人は何の理由もなく、何の目的もなく創造されているのだろうか。)
[問2]
以下の文を英訳しなさい。

全く努力しないことに言訳は通用しない。

You cannot excuse yourself for not making any effort. で済ませずに、no の反復テクニックで3通りに訳してみると、

[答]

  1. There is no excuse for making no effort.
  2. There is no excuse for no effort.
  3. No excuse for no effort.

同じ noの反復でも n. のように no excuse と no effort に間髪を入れず no excuse for no effort と no を連続反復すれば、表現がぐんと勢いづきます。さらに There is 省略で No excuse for no effort と no を前面に押し出せば、文頭 No excuse、文末 no effort の強調反復と言うより、名詞句 No excuse for no effort が文頭かつ文末という最強の「no の強調反復」―― o. は「no の連続反復」プラス「no の強調反復」で no の2つの反復テクニックの結晶ですが、この「プラス」、つまり「no の連続反復」から「no の強調反復」への展開は私が「英語の体言止め」と呼ぶもう1つの技法を介在して結実したもの。

3. 体言止め

「他人行儀にする必要はありません」を「他人行儀は不要」と名詞「不要」で文を終われば「体言止め」、英語なら以下。

  1. There is no need to stand on ceremony.
    (他人行儀にする必要はありません。)
  2. No need to stand on ceremony.
    (他人行儀は不要。)

日本語の体言止めは文のまさに最後の語句が名詞でその後に動詞が省略された形ですが、「英語の体言止め」は文の最後の文の要素(element of the sentence)が名詞句(q. では主語)でその前の動詞までの語句(q. では There is)を省略した形で、文末の名詞句(q. では No need to stand on ceremony)だけが残った形態になります。英語の体言止めの典型は以下の2タイプ。

1. There is 省略で体言止め
  1. There is nothing to do but sit back and wait for the time being.
  2. Nothing to do but sit back and wait for the time being.
    (当分はじっと待つほかなし。)
2. It is省略 で体言止め
  1. It is time to stop talking and start acting.
  2. Time to stop talking and start acting.
    (おしゃべりはやめて行動する時。)

1.のタイプでは主語が残り、2.のタイプで残るのは補語――お馴染みの口語表現 No problem.(いいとも、どういたしまして、大丈夫。)は主語ととっても補語ととっても問題なし。

  1. There's no problem.
  2. It's no problem.
  3. No problem.
[問3]
諺 No pain, no gain. に文構造を与えなさい。

換言すれば「No pain、no gain の文の要素は何」ということです。

No pain, no gain を諺「まかぬ種は生えぬ」に当てなければ「苦労がなければ利益もなし」と訳すのが一般的、これでいけば if 節の従属節と主節の2節が there is 構文仕立ての y. になります。

  1. If there is no pain, there is no gain.

しかしこれよりぐんと上質な、there is 構文を重ねる高級構文を「英語、ことわざ10選-8」で学習しましたね。

  1. Where there's a will, there's a way.
    (ことわざ: 精神一到何事か成らざらん。)

この構文に当てると no pain、no gain が there is 構文2節の文末という「no の強調反復」の ab.、さらに体言止めで従属節 Where there's、主節 there's を省略すると No pain の直後に no gain とくる「no の連続反復」テクニック――「no の強調反復」→「体言止め」→「no の連続反復」とテクニックの連続技で決めたのが諺 No pain, no gain. なのです。ちなみに Where there's a will, there's a way. を体言止めで z. → aa. と技をかけても、表現は決まりませんね、否定語 no が前面に出てこそ迫力が出るというもの。

  1. ?A will, a way.

[答]

  1. Where there's no pain, there's no gain.
    (労のないところに益なし。)

「No A, no B.(AなくばBなし、AのないところにBなし。)」のイディオムをひとつ紹介しましょう。

  1. No harm, no foul.
    (被害なければ問題なし。)

これはバスケットボール起源の表現で、ルール違反のプレーでも試合に得点的影響がなければ foul(反則)としないという意味が転じて、一般に No damage, no problem.(被害なければ問題なし。)、No damage, no punishment.(被害なければ処罰なし。)の意味で使われるようになったもの。

「英語の体言止め」というテクニックにも英語らしい豊かな独創力が大小様々な表現の花を咲かせています。その中から3つばかり摘み取ってお見せしましょう。

  • 体言止め否定命令
  • A or no A 型
  • 体言止め同格反復
[問4]
以下の文を英訳しなさい。

不正と妥協しないこと。悪行を見逃さないこと。

まず英訳文の解釈ですが、これは「要するに不正と妥協しないことである」「悪行を見逃さないことは言うまでもない」の『不正と妥協しないこと』『悪行を見逃さないこと』ではなく、日本語の体言止め命令で「不正と妥協すべからず。悪行を見逃すべからず」の意味ですね。英語にも体言止め命令が、それも2タイプあることをご存知ですか。

英語の体言止め否定命令の2形式
NoN型: No(文頭)+ 名詞(Noun)
NoG型: No(文頭)+ 動名詞(Gerund)

NoN型か NoG型かの選択は表現的好みと表現感覚·効果の問題ですが、動詞と同形あるいは派生の名詞がない場合(例えば動詞 overlook)は選択の余地なく NoG型になります。

  1. Don't make any compromise with wrongdoing. Don't overlook misdeeds.
  2. There must be no compromise with wrongdoing. There must be no overlooking misdeeds.

ad. は普通の否定命令文、ae. は禁止の意を表す否定文―― ae. 2つの There must be を省略すれば、NoN型(No compromise with wrongdoing.)、NoG型(No overlooking misdeeds.)の体言止め否定命令文がそれぞれ生成します。

[答]

  1. No compromise with wrongdoing. No overlooking misdeeds.

A or no A 型は譲歩節(concessive clause)whether there is A or no A の whether there is 省略で生成した強調の譲歩表現、つまり譲歩強調構文。

  1. Luck or no luck, we must soldier on.
    (運に恵まれようと恵まれまいと、粘り強く前進しなければならない。)
  2. Money or no money, we must soldier on.
    (金があってもなくても、粘り強く前進しなければならない。)

A or no A の no A の A を省略することもあります。

  1. Money or no, we must soldier on.
[問5]
以下の2(passage)は TIMENewsweek の同日号からの引用、この2節に共通する表現テクニックを説明しなさい。
  1. The campaign headquarters of Hong Kong's Chief Executive, Donald Tsang, is unusual for an election nerve center. For one thing, it's clean, and quiet: no spilled coffee, no half-eaten pizza slices, no one cursing into a phone.
    (香港行政長官ドナルド・ツァンの選挙対策本部は選挙運動の中枢部としては趣を異にする。まずひとつにきれいで静かだ。コーヒーがこぼれているようなこともないし、食べかけのピザが残っているようなこともない、受話器に向かって口汚くまくしたてているような姿も見られない。)

    出典:TIME 2007年3月26日号 p.21

  2. He now “lives” with his wife and three children in one room whose broken windows are stuffed with plastic shopping bags: no heat, no furniture, no cooking utensils, no mattresses. They sleep on a grenn plastic mat. It does not get more squalid than that.
    (今、彼は妻と3人の子供と共に、ガラスの割れた窓にビニールの買い物袋を詰めたたった一部屋で「生活して」いる。そこには暖房もないし、家具もないし、炊事用具もないし、マットレスもない。緑のビニールマット一枚が一家の寝床、これ以上はむさ苦しくなりようもない部屋である。)

    出典:Newsweek 2007年3月26日号 p.13

体言止め同格反復テクニックの登場―― TIMENewsweek の同日号に顔見せしていますが、これが両誌での初顔合わせというのでも、皆さんにとって初対面というのでもない「おなじみ」の表現技法、ですが「英語の表現技法」自体の認識も評価もゼロに近い私たちの英語学習の現状では知られざる表現手法、その「手」を知らず、その「顔」に見覚えがないのも致し方ありませんね。

同じ体言止めの同格反復ですが、Newsweek からの1節は TIME の1節より応用的―― one room whose broken windows are stuffed with plastic shopping bags と、ただの broken windows(ガラスの割れた窓)でなく、stuffed with plastic shopping bags(ビニールの買い物袋を詰めた)とbroken windows を描写し、単に「ベッドもない」でなく1文独立で They sleep on a green plastic mat.(一家は緑のビニールマットの上で寝る。)と記述しているため、表現形式が少々複雑化していますが、もし以下の 1.、2. のように単純化すると TIME の1節と全く同じ型通りの体言止め同格反復になります。

  1. whose broken windows are stuffed with plastic shopping bags
    → no unbroken windows
  2. They sleep on a green plastic mat.
    → no beds

1.、2. の表現転換で ak. を全文書き換えると、コロンの直後が no unbroken windows、no beds は no mattresses の前に配置、one room を関係代名詞節 that does not get more squalid が限定する al. に変わります。

  1. He now “lives” with his wife and three children in one room that does not get more squalid: no unbroken windows, no heat, no furniture, no cooking utensils, no beds, no mattresses.

ここで aj. と al. を比較すれば、それぞれのコロン以下に羅列した「no + 名詞句」群がそれぞれの形容詞「clean, and quiet」「squalid」を具体的に補足説明する同格語として機能しているのは一目瞭然。

clean と squalid は反意語(antonym)―― clean と squalid が象徴する生存の明暗のコントラストが興を添えた2節。さて、aj.、ak. のように「no + 名詞句」がいくつも並んでいても、本テーマの諺(No pain, no gain.)のように no pain と no gain の2つだけでも、接続詞の「手」でつながない空手の技法は並列(parataxis)。

4. 並列

例えばライティングの手引きとして定評のある『The Elements of Style』の中で並列に言及している部分はあっても parataxis という用語は一度も使われていない、例えば学習書に「and や or で並列した文や語句」なんて「並列」にあるまじき『並列』が説明文中に見つかる、という調子で「parataxis」も「並列」もいまだ陽の当たらない用語。

以下の3つの諺の共通点は並列の命令文ですが、相違点もありますね。並列とは並々ならぬ列なのです。

  1. Hear no evil, see no evil, speak no evil.
    (ことわざ:見ざる、聞かざる、言わざる。)
  2. Love me, love my dog.
    (ことわざ:坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。)
  3. Waste not, want not.
    (ことわざ:むだがなければ不足なし。)

No excellence in expressiveness, no impressiveness. 表現力なくして印象なし。

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どだい、土台が違う

木造平屋建ての土台でビルは建てられない。3階ビルの土台に30階高層ビルは建たない。英語ができるといっても、いわば平屋の英語力と、いわば高層ビルの英語力の違いがある。

どこまで英語力を伸ばせるか。
どこまで実力が積み上がるか、
それは、土台で決まる。

世に、ネイティブ級ライティング力の超高層英語力を
現実に実現できる英語教育は、TMシステムあるのみ。

TMシステム
(The Thorough Mastering System)
英語の文法と技法の全容を実際的に深く、
深く実際的に教えきる初の英語習熟教育。

重たい英語学習を避けるなら、
どこまでも、どこまでも、どこまでも
軽い英語力でいくしかない。
深い英語学習を避けるなら、
いつまでも、いつまでも、いつまでも
理解の大不足のままでいるしかない。