Japlish日本の英語のキャッチコピーは日本英語

和製英語という日本語はお愛嬌、日本英語Japlishという英語は笑い事ではない。英文キャッチコピーが証する日本の英語水準。

間違うことを恐れるな、英会話上達法としてこの点を力説する人は多い、しかし誤ることを恐れるべきところで恐れずに誤った人達がいる。英文キャッチコピーという非常に目立つところで、たった1センテンス、2センテンスのまともな英語を作れなかった多くの日本人がいる。ここにJaplish(日本英語)の起源あり。

PART 1. Japlish

以下10文の英語、どう思います。

  1. The truth is, he isn't a monster they try to make him out to be.
  2. American books can at times sell more in Japan than back home in English.
  3. I thought I could mail the box home in time to get to my family for Christmas.
  4. The situation is still not as bad as it could.
  5. If we keep putting off the decision, we are seen just sitting back and doing nothing.
  6. They are still far apart from how much to ante up.
  7. The goal of every aid agency seems to close up shop, its job done.
  8. Coming from the same terrorist group as it is, the threat carries more menace.
  9. Does the law say you can take my stuff because you are going to do with it that is going to be really good for humanity?
  10. Saying sorry is not so difficult if the mistakes you apologize for are not your own than they are yours.

ネイティブぽい英文でしょう。ですが、実は各文に誤りのある全て非文法な英文なのです。平均的日本人が書く全然ネイティブぽくない英文、実はどういうことになっているのでしょうね。この点を検証するのに実にかっこうの証拠品が至るところで見つかりますよ。英文キャッチコピーなんて目立つところにある、目立つための展示作品は、その作者達が脳味噌を絞って創った力作に違いありません。

breakfast と lunch で brunch(昼食兼用の遅い朝食)、smoke と fog で smog(スモッグ)、nutrition と pharmaceutical で nutraceutical(栄養素)とは「サプリメント(supplement)」のこと、同様に Japanese と English を合成した Japlish(日本英語)なる混成語(blend)をご存知だろうか。

...“Japlish,” the cryptic English poetry beloved of Japanese copywriters (“Your health and loveliness is our best wish,” reads a candy wrapper.“Give us a chance to realize it”)...

出典:Newsweek 2005年3月5日号 p.42

「日本のコピーライターにこよなく愛されし難解な英詩」―― Japlish が a sort of poetry ならその作者も a poet of sorts(詩人の端くれ)にはなりますが、この poetryにirony(皮肉)以上の意味があるのでしょうか。皮肉っぽい古文調の beloved of(この of は受身の動作主を示す by の前身)、皮肉な cryptic(控え目に言っても cryptic poetry は erratic poetry[ずっこけ詩]の understatement)――皮々肉々ながら、しがないk.を詩的なl.に変え、拙い broken English を cryptic English poetry に昇華し、たんなる Japlish の cynicism(冷笑)ではなく、Japlish に lyricism(叙情性)を与えるあたり、さすが如才がなくて詩才がある一流誌のジャーナリスト。

  1. the broken English used by Japanese copywriters
  2. the cryptic English poetry beloved of Japanese copywriters
日本英語 Japlishの2大特色:
1. 非文法
2. 意味不明

Japlish の例として、このジャーナリストが数ありすぎる中から選んだのはお菓子の wrapper(包み紙)のキャッチコピーA、私が選んだお菓子の wrapper のキャッチコピーはキャッチコピーB、どちらの wrapper がより upper な topper(傑作)でしょうね。

キャッチコピーA:
Your health and loveliness is our best wish. Give us a chance to realize it.
キャッチコピーB:
A heavy and thick taste-graceful seasoning is one of the things we have most treasured.

キャッチコピーBの謎(「意味不明」の婉曲表現)は主語 A heavy and thick taste-graceful seasoning。「調味料」「薬味」の seasoning は flavor(風味)の勘違いでは、ですがここは動詞 season(味をつける)の流れで「味付け」「調味」と好意的に解釈するとしましても、「重い」「厚い」の heavy、thick はそも食に通じる形容詞なのでしょうか。

heavy には「胃にもたれる」の意味があり、液体が「濃厚な」のは thick、ですから heavy and thick soup なら「しつこくてこってりしたスープ」で一応食べられますが、a heavy and thick seasoning は英語として食える代物なんでしょうかね。

英語のネイティブには a heavy and thick seasoning は cryptic と言うより esoteric、と言うより lunatic――「難解な」と言うより「深遠な」、と言うより「狂気じみた」a heavy and thick seasoning も私たち日本人には解けなくもない謎。

heavy and thick が意味的にひとつの heavy-and-thick なら、「重い」と「厚い」で「重厚な」と解読、さらにこの「重厚な」は「コクのある」の意と判読できますね。ただし日本語で「重厚な」がそのまま heavy and thick に英語変換できるわけがありませんから、キャッチコピーBの heavy and thick は英語の顔をした日本語、面は英語で中身は日本語、さらばこれぞ日本英語 Japlish の真面目(しんめんもく)! 食べ方が graceful でも食べ物や味付けが graceful であるわけがない taste-graceful も「上品な味わいの」と解読、ただし taste-graceful は英文法を毒する形態をしていますから、解読する前に graceful-tasting と解毒する必要がありますよ。

キャッチコピーBの非文法は主語 A heavy and thick taste-graceful seasoning、taste-graceful → graceful-tasting 以外にもう1箇所訂正の必要あり。3つの修飾語 heavy、thick、graceful-tasting はここでは性状を示す同類の形容詞ですから m. か n.。

  1. A heavy and thick and graceful-tasting seasoning
  2. A heavy, thick, graceful-tasting seasoning

heavy と thick が意味的にペアをなし heavy and thick で1つと数える場合も heavy and thick と graceful-tasting の間にコンマが必要。

  1. a heavy and thick, graceful-tasting seasoning

キャッチコピーBでなく、非文法の非がないキャッチコピーCだったら、以下の不敵なメッセージをこめて英語をからかったジョーク、私なんかは味なまねをするコピーライターと感心するところ。

When we cherish and you relish Japlish, it flourishes.
(我々が愛用し、あなたが賞味するなら、日本英語繁盛。)

キャッチコピーC:
A heavy-and-thick, graceful-tasting flavor is one of the things we have most prized.
(コクのある上品な風味は、わたしどもがとても大切にしてきたものに数えます。)

ですが1文に2つの「非」では、ヒーヒー言いながら Japlish 作り、英語にからかわれている真顔のコピーライターのイメージしか浮かんできませんね。

ところで、以下の例文を掲げ、文法機能を完全に果たしている文でも意味不明は非文法という文法的判断を下したアメリカの言語学者がいるのです。

Colorless green ideas sleep furiously. (無色な緑念は激怒して眠る。)

「緑念」はナンセンスな green ideas をナンセンスに訳した私のジョーク、作者は変形生成文法(transformational generative grammar)の開祖ノーム·チョムスキー(Noam Chomsky)、大いに議論を呼び、文法学者作の非文法文が続出、果ては詩人の豊かな想像力をもって解せない意味不明などないとチョムスキーの「名珍文」をモチーフにした一編の詩も登場――ひとつ残念なことは、「意味不明」の元祖 Japlish に言及した言語学者がいなかったこと。

ファション界の流行色がどう変わっても、人間界の基調色は当分 green―― green bill は「環境関連法案」、green car は「緑の車」の前に「エコカー」を想起する時代、「環境志向でいく」なら頭韻効果も発揮した go green で。

  1. Because of global warming, going green is going global.
    (地球温暖化で環境志向が地球規模になりつつある。)

チョムスキーの学術上のナンセンス Colorless green ideas sleep furiously. が出た当時は、「地球温暖化」が日常用語化するずっと以前、green が「環境にやさしい」シンボル色でなかった時代、しかし今は詩人の想像力を必要とせずに5単語中3語 colorless green ideas が解せるまでに「緑」化が進んできましたね。

  1. colorless green ideas
    「ぱっとしない環境保護のアイデア」

colorless green(無色の緑)のナンセンスに green ideas(緑の考え)のナンセンスを重ねた nonsensical nonsense の colorless green ideas ではありましたが、colorlessは uninteresting、dull の意味で「つまらない」、green は「環境保護の」、ideas は「アイデア」で今や colorless と green を組み合わせて矛盾語法(oxymoron)効果を発揮した冴えた「冴えない環境保護のアイデア」に一変――もしチョムスキーの選んだ色が green でなく yellow や red だったら、意味的紅葉は起こらず、colorless yellow ideas は今日もナンセンスのまま、と思うと、greenの「変色」で結局は完璧な非文法文を作れなかった変形文法学者チョムスキーは、やはりただ者ではありませんな。ちなみにベトナム戦争では反戦の先頭に立ち、来日したこともありますが目的は反戦活動、その折チョムスキーが意味不明の英文キャッチコピーに包まれたお菓子を食べたかどうかは今もって不明。

[問1]
以下の文に1箇所誤りがある、2通りに訂正しなさい。
  1. Your health and loveliness is our best wish.

2文仕立のキャッチコピーAの非文法は Your health and loveliness is ――単数形 A、B が butter and bread(バターとパン)のように A and B で A、B 2つなら複数扱い、bread and butter(バターつきパン)のように A and B で1つなら単数扱い、health and loveliness は複数扱いになりますね。切っても切れない bread and butter パンのように完全に一体化していなくとも、例えば name(名声)とfame(名声)同義語2つの A and B は単数扱いが自然(おまけに[neim]、[feim]の脚韻効果が一体化を強化)。

  1. Name and fame, which disappears like the morning dew, is not worth striving for.
    (朝露のごとく消える名声は労して得ようとするに値せず。)

複数扱いの A and B に所有格を冠して one's A and B としてもやっぱり複数扱い、ただし every を冠した every A and B は単数扱い。

  1. Every man and woman aged 25 or over is eligible to run for the Lower House.
    (25歳以上の全ての男女が衆議院に立候補できる。)

複数扱いの health and loveliness に your を冠した Your health and loveliness は複数扱い、従って Your health and loveliness is → Your health and loveliness are と訂正する必要があります。

2つ目の訂正は1つ目 is → are の逆でいきましょう。動詞 is はそのまま、主語の形態を変える、と言っても、

  1. Your healthy loveliness is...
    (あなたの健康美は...)

と意味まで変わっては「訂正」の行き過ぎ。意味を変えずに形態を変えるとなれは変形、名詞句 Your health and loveliness は動名詞句 Your being healthy and lovely に変形。

訂正文1:
Your health and loveliness are our best wish.
訂正文2:
Your being healthy and lovely is our best wish.

Your health and loveliness are → Your being healthy and lovely is の変形展開で注目すべきは「音」――語尾が共に[i]の healthy、lovely で「音」入り「文法プラス技法」展開、さらに healthy and lovely の語順を逆転すればすっかり調「音」された lovely and healthy、キャッチコピーAの非文法を美しく克服したキャッチコピーDが出来上がり。

キャッチコピーD:
Your being lovely and healthy is our best wish. Give us a chance to realize it.

気品のある Your being lovely and healthy is が lovely な白鳥なら、Your health and loveliness is は ugly なアヒル――今、変形によって表現力が引き出される瞬間に、あなたは立ち会ったのです。

The duck of “Your health and loveliness is” is metamorphosed into the swan of “Your being lovely and healthy is” by transformation as if by magic.
(まるで魔法のように、変形でアヒルYour health and loveliness isは白鳥Your being lovely and healthy isに変容す。)

[問2]
キャッチコピーDのどこが意味不明か。

キャッチコピーAの非文法をうまく乗り越え進化したキャッチコピーD、でも一難去ってまた一難、キャッチコピーAのもう1つの難所「意味不明」も越えてさらに進歩する必要あり。

our best wish、わかったようなわからないような、やっぱりよくわからない our best wish ――どこが? と思うなら、あなたは v. = w. で考えているからですよ。

  1. our best wish
  2. the best of our wishes (最良の願い)

さりながら one's best wishes/wish(複数形wishesが標準的)、every best wish は慣用表現、one's best wishes/wish for someone は「相手の幸福や成功を願う気持」、Give my best wishes to your parents. なら「ご両親によろしく」、手紙の結語 With best wishes(my省略)、With every best wish は「ご多幸を祈ります」の意。文法レベルで説明すればこの best は独立最上級(absolute superlative)で強意語、one's good wishes の強意表現が one's best wishes。

「one's best wishes は慣用表現」を換言すれば、my best wishes、her best wishes、their best wishes と人は my、her、their と違っても best wishes の中身は同じということ―― one's best wishes の wishes に特定の個人の個々の願いをこめることはできないのです。

「変」を ? で示した「変」指数

  1. ? Your health is our best wish.
  2. ?? Your health and loveliness are our best wish.
  3. ???? Give us a chance to realize it.

one's best wishes には健康を祈る気持もこもっていますから、your health と our best wish の相性はよいものの、S(Your health)+ V(is)+ C(our best wish)とくると両者の関係はぎくしゃくしてしまいます。おまけに loveliness なんてよそ者(stranger)と連れ立つと、関係は even stranger「さらにいっそう変な」ものになってきます。「ご多幸」は祈るだけのもので実現するものでないように、one's best wishes は give や send しても realize するものではなく、realize it(our best wish)は「????」、「????」は「意味不明」――実に x. → y. → z. と入念に、キャッチコピーAの作者は「意味不明」を創作したのでありました。

日本語入りした英単語の人気ベスト10(テン)に best 入りは確実――それがベスト、これがベストなやり方、どれがベスト商品・・・私なども、英語教育に対する私の基本姿勢を表明した以下のスローガンで best を5つもベタベタ使っております。

To the best of my knowledge: whatever is worth teaching is worth teaching best; whatever is worth learning is worthy of being best understood. The best is always by far the best.
(私の知る限り、教えるに値するものなら最もよく教えるに値し、学ぶに値するものなら最もよく理解するに値する。ベストは常に断然ベスト。)

best 好きな日本人なら誰でも最低これだけは英語で言えると言えるのが「ベストを尽くせ」。

[問3]
best を使って「最善を尽くせ」を5通りに英訳しなさい。

5つのbestで私の英語教育の基本姿勢を表明したのに続き、もう5つのbestで言語表現に対する英語の基本姿勢を明白にしておきましょう。

  1. Do your best.
  2. Give it your best.
  3. Do your level best.
  4. Do your very best.
  5. Do the best you can.

英語は uniformity(一様)を嫌い diversity(多様)を好むことば、定番表現があっても定番一辺倒の conformity(遵奉)を嫌うことば――定番 Do your best. があっても、それとはかなり表現の違う Give it your best. と出るのは英語の定石、定番にバリエーションをつけるのは英語の十八番、強意語 level を付加して best を強めた ac.、very で最上級を強める文法的手順に従って best を強めた ad.、こんなふうにバリエーションのつけ方にバリエーションをつける英語は表現に凝ることば。

aa. → ac.、aa. → ad. の語句レベルの強調に対し、aa. → ae. は構造レベルの強調展開、af. → ag. で2つ目の do の目的語 that(関係代名詞)を省略、ag. → ae. で反復語 do 省略、私は af. → ae. の変形的表現展開を反復省略テクニックと呼んでいます。

  1. Do the best that you can do.
  2. Do the best you can do.
  3. Do the best you can.

変形なる文法の仕組を表現力に変える技法展開こそが英語の真髄――だから私は英語は「文法プラス技法」の言語、「文法プラス技法」の英語「大」学習でしか英語はマスターできないと言明するのです。英語の真髄をマスターしていない英語のマスターなんて変な英語のマスターはありえなのです。

語彙力強化は別として、私たちの英語学習·教育は真髄に至るずっと手前の「受験英語」で停止しています。だからベストの努力にもかかわらず英語習得というベストの結果が出てこないのです。進路を英語科や英文科に取っても、学問主導の大学では実用の技である技法は学べないのです。だからそういう学部を卒業した方が英語教師になっても受験英語しか教えられない、教えない現状がいつまでも現在時制で語らざるを得ない英語教育事情であり続けてきたのです。

5つの「ベストを尽くせ」を羅列すると、英語学習でベストを尽くすとはどういうことか一目瞭然――最初の2文は文法、後の3文は技法の領域、英語の表現領域はまさに5分の2が文法、5分の3が技法、ただし最後の2文が文法を活用した技法展開であるように、技法の3分の2は実は文法の応用領域、そしてその中核は変形テクニック――5つの「ベストを尽くせ」は英語を凝縮してその essence(本質)を示した epitome(縮図)。

Is your best the best? Where English is concerned, doing your best is not enough; you must know the best way to do your best. Stop to think here, and this starts you thinking what's wrong with our English education based on rote learning and memorization. What is needed is the English education that enables you to expect the best from the best you can do. Very much depends on how well to understand English.
(あなたのベストはベスト? 英語に関しては、最善を尽くしているではまだ不足、最善を尽くす最善の方法を知らねばならない。ここで立ち止まって考えてみる、すると丸暗記と暗記を根本とする私たちの英語教育のどこに問題があるのか考え始める。必要なのは、ベストの努力からベストの成果を期待できる英語教育。どう英語をよく理解するかにかかっていろところ大。)

もしキャッチコピーAの作者がこの our best wish はイディオムの our best wish ではないと開き直ったら、その our best wish に運が開けるのでしょうか。確かにイディオムでないイディオムと同形もありえますね。同じ out of the box でも think out of the box なら、この out of the box は unconventionally(型にはまらずに)の意、come out of the box なら box から特別なものは何も出ず、ただの「その箱から」、ちなみに think out of the box はイディオム think outside the box のバリエーション。

  1. think out of the box (既成概念にとらわれず考える。)
  2. come out of the box (その箱から出て来る。)

my best wish for the unidiomatic ”our best wish“(イディオムでないour best wishに幸あれかし。)、ですが at best で v. = aj. あたり。

  1. our best wish
  2. the best we can wish for

aj. なら at best(よくても)どころか、大いによしで開運、と思う方は、the best we can wish for が at best の意味の best を際立たせる技法、換言すれば at best の強調構文であることを知らないからですよ。The best we can wish for is that... とくれば、 that 以下には大望はこず、いわば「小吉」を願う表現――ですから Your health and loveliness is the best we can wish for. は「せいぜい your health and loveliness ぐらいなもの」なんてお客様に無礼な失言になってしまい逆運を招くだけ。

the best we can say と wish for が say になっても at best の意味合いは同じ、The best we can say is that... と切り出した that 節で大口を叩くわけにはいきません。

  1. We can say at best that...
  2. At best we can say that...
  3. The best we can say is that...
    (せいぜい言えることは・・・)

ak. → al. → am. と best は際立ち、that 節も際立つ am. は best と that 節の両方を強調する ak. の技法展開、つまり強調構文(emphatic construction)――以下は am. の表現形式で、at best の淡い意味的色合いの best がとっても渋い、この best のベスト表現とも言えそうな引用文。

In closing the books on 2010, the best that might be said was that it was better than 2009. (2010年の会計簿を閉じるにあたって、せいぜい言えそうなことは、2010年は2009年よりよかった。)

出典:TIME 2011年1月10日号 p.38

an. → ao. → ap.、仮定法過去 mightで「婉曲」、私(I)や私たち(we)を出さない受動態 be said で「ぼかし」――文法の手を加え表現に色をつける、ここではグラデーションをつけるのは英語のお手のもの。

  1. the best I/we can say
  2. the best I/we might say
  3. the best that might be said

淡い best をさらに淡くぼかした上で that 節の better ―― best で better、この best と better の組み合わせは絶妙。at one's best(最もよい状態で)のような金ピカの best もあれば、at best のようないぶし銀の best もありますが、引用文のいぶし銀は金賞。

[問4]
以下の英文の(      )に前置詞を入れ文を完成しなさい。
  1. Bill Gates has called him “the best person I know (      ) predicting the future of artificial intelligence.”

前置詞 about で know about predicting...、でもいやに簡単だと思うのでは、確かにあなたは大きな誤りを犯している可能性がありますよ。

  1. I know about the deal.
    (その取引のことは知っている)

ar. の自動詞(intransitive verb)の know では as. の文法は支えられませんね。

  1. the best person I know about predicting the future of artificial intelligence

the best person と I の間に省略されている関係代名詞 that(the best person that I know about...)が know の目的語として機能しなければ文構造は壊れてしまいます。ですから as. の know は他動詞(transitive verb)であることが必要、もっとも at. の know は他動詞、as. の know も他動詞ということなら了解。

  1. You must know something about the deal.
    (その取引のことで何か知っているはずだ。)

それにしてもここまで best できたのだから the best person の best が怪しい、と勘ぐるなら、その best 勘は good ですよ。

[答]

  1. Bill Gates has called him ”the best person I know at predicting the future of artificial intelligence.“ (ビル·ゲイツは彼[Raymond Kurzweil]のことを「私の知っている限り、人工知能の未来を予知することに最も長けた人」と呼んでいる。) 出典: TIME 2011年2月21日号 p. 27

前置詞 at に面食らって know at なんて句動詞(phrasal verb)があったかなと辞書を調べることになるのは、about と at では文構造がまるで違うことがわかっていないからですよ。括弧くくり(bracketing)すると「まるで」一目瞭然。

Bracketing1:
  1. the best person [I know about predicting the future of artificial intelligence]
  2. the best person [I know] at predicting the future of artificial intelligence
Bracketing2:
  1. [the best person [I know about predicting the future of artificial intelligence]]
  2. [[the best person [I know]] at predicting the future of artificial intelligence]

全体を括弧くくりした Bracketing2. では、as. は右側に括弧が伸び、au. は左側に括弧が伸びる、専門用語を使えば as. は右枝構文(right-branching construction)、au. は左枝構文(left-branching construction)、「まるで」がくっきり浮かび上がります。about の前置詞句は know を修飾し、at の前置詞句は the best person を修飾するのですから、まるで違うのです。

ここまで説明してまだ the best person の best と at の関係にピンとこないならまるでわかっていない―― a person who is good at English(英語の得意な人)が「まるで」になるのは受験英語の受難者になってしまっているからですよ。技法レベルの au.(原文)を文法レベルの表現に言い換えるとav.。

  1. the person who I know is best at predicting the future of artificial intelligence

さらに av. はふつう省略できない主格の関係代名詞 who を省略する特色のある表現展開も可能。

  1. the person I know is best at predicting the future of artificial intelligence

av. から au. が変形生成するわけではありませんが、2つの表現形式には表(文法)と裏(技法)の表現関係があります。奥深い英語は表より裏の方が輝いている奥ゆかしいことば。

以上のごとく、英語の best を学習するだけでなく、best で英語を学習するのが best の best 学習、キャッチコピーAの our best wish の best にもけりをつけましょう。

our best wish の問題は wish でなく best、best wish で何が望みだったのか、「何よりも望むこと」だったら best でなく dearest ―― our dearest wish でキャッチコピーDの「意味不明」を克服でキャッチコピーEで一応めでたし。

キャッチコピーE:
Your being lovely and healthy is our dearest wish. Give us a chance to realize it.
(すてきで健やかなあなたが切なる願い。かなえる機会をくださいな。)

2度めでたし、めでたしなら、この先はプロの英文キャッチコピー――「かなえる機会」を与えるためには、あなたは美容と健康のためにこのお菓子を食べなきゃならない、こんなおふざけに our では生まじめすぎる、our では「食べてよ」の裏心「買ってよ」も出る、ここはキャンディーちゃんになって my。そこで甘くもせつないキャンディーのキャッチコピーF。

キャッチコピーF:
Your being lovely and healthy is my dearest wish. O sweet! I yearn for your teeth. Please eat me.
(すてきで健やかなあなたがわたしの切なる願い。おおスイート! あなたの歯が恋しい。ねえ食べてよ)

修辞学(rhetoric)で漸降法(anticlimax)と呼ぶ技法がキャッチコピーFのテクニック――荘重な調子でまじめなことを言った直後に変調、こっけいなことを述べてすとんと調子を落とす漸降法は仕掛ける手法、キャッチコピーFは 1. → 2. と上げ、→ 3. → 4.と下げる4段仕立て。

漸降法
anticlimax という名の climax

  1. Your being lovely and healthy is my dearest wish. とまじめ調で殊勝なことを言う、この my がキャンディーちゃんだとはつゆ思わない。
  2. O sweet! 一気に調子を上げる、お菓子は sweet、あなたはキャンディーちゃんの sweetheart(恋人)、have a sweet tooth「甘党である」あなたが本命。O sweet! はお菓子のキャンディーちゃんのおかしなおかしな絶叫。
  3. I yearn for your teeth. の teeth であれっ? 、これで「変」調。
  4. ショッキングなまでにこっけいな eat me で落ちがつき、すとんと調子が落ちる。

I、my、me の格変化で my → I → me と転調するあたりはさすが英語を教えるプロの英文キャッチコピー、でしょう。

キャッチコピーG:
Your sweetness and kindness is my best hope. O sweet! I'm dying to dive into your mouth. Give me a hand, please.
(やさしく親切なあなたが頼みの綱。おおスイート! どうしてもあなたのお口に飛び込みたいの。手伝ってよ、お願い)

頭韻を踏む dying と dive で必死のダイビングとなったキャッチコピーGはFの姉妹作、dying は yearn の、your mouth は your teeth の、Give me a hand, please. は Please eat me. の言い換え。キャッチコピーAと比べると our best wish で捨てた best にも my best hope と希望が生まれ、Your health and loveliness is で捨てた is も kindness の意味もある sweetness で Your sweetness and kindness is と蘇生、is は are よりおしゃれ。姉と比べると、妹のキャンディーちゃんは初めから your sweetness and kindness が my best hope とすがり、終わりは please、最初から最後まで「お願いしま~す、お願いしま~す」の選挙型、candidate の Candy ちゃんに清き一口を!

英語学習とは学習者のレベルを英語のレベルまで引き上げることで、英語のレベルを学習者のレベルまで引き下げることではない。

おかしなお菓子のキャッチコピー

時には sugarcoat した表現でなく、あけすけに真実を言う必要もある。

English is all Greek to the Japanese.
日本人は英語がちんぷんかんぷん。

と言うのはもちろん誇張だが、

When it comes to writing, however,
English is all Greek to Japanese.
しかしながら、ライティングと言うことになると、
日本人は英語がちんぷんかんぷんわかちゃいない。

と言うのは誇張でもなんでもない。Japlish なる blemish(汚点)のついたラベル、包装紙、容器の蓋、パッケージが証拠。頭を絞って作った、短い、たった1センテンスの英文の「出品作」が非文法で意味不明なところがあるとなれば、これは完膚無きまでに完璧な「ちんぷんかんぷん」ではないか。

その一例を示す前に、英文の to the Japanese、to Japanese について一言―― Japanese(日本人)は単複同形、to the Japanese、to JapaneseのJapanese は共に複数形。ついでながら語尾「-nese」「-guese」「-ese」、語末音[z]のChinese(中国人)、Lebanese(レバノン人)、Portuguese(ポルトガル人)、Vietnamese(ベトナム人)も単複同形(one Chinese、two Chinese)、語末音「s」の Swiss(スイス人)も単複同形。

キャッチコピー的視点から見ると、to the Japanese より to Japanese の方が English、Greek、Japaneseのコントラストがストレートですっきりしているし、もちろん Japanese は「日本語」でもあり、英語とギリシャ語と日本語が面(つら)を揃えているようにも見えておもしろ味もあり、英文2行の各行の長さが揃ってすっきりしてもいる。しかし以下の日本の英語教育にかかるスローガンでは総称的に「日本国民」を表す「the + Japanese(複数形)」が適当。

英語がマスターできる英語教育のためのスローガン:
Who's made you an English geek?
英語ダメ男、ダメ子にしたのは誰?
English is all Greek to the Japanese.

English、Greek、Japanese の三つ揃いに geek、Greek の組み合わせ、an English geek の強烈な個性で迫力満点のスローガン。

geek はやはり1音節で長母音、語尾「k」のjerk(ばか)、dork(間抜け)のお仲間ながら、jerk や dork と違い、とても brainy「頭のいい」人も geek。

Dictionary of the English Language の geek はまず以下2つの意味が出てくる。

  1. A person regarded as foolish, inept, or clumsy.
    (愚か、無能、あるいはぎこちないと考えられる人)
  2. A person who is single-minded or accomplished in scientific or technical pursuits but is felt to be socially inept.
    (科学的、技術的な研究に打ち込んだり、優秀であったりするが、社交性に欠くと思われる人)

a. なら an English geek は「英語バカ」、b. なら「英語オタク」―― geekが「コンピューターの専門家」であることもよくあるが、Random House Kemerman Webster's College Dictionary には以下の定義が見つかる。

an expert in computers(a term of pride as self-reference, but often considered offensive when used by outsiders)

カッコ内をかみくだいて言うと、「自分で自分のことを geek と言う場合は誇らしくもあるが、門外漢から geek と言われるとむかっとくることば」――元々は「バカ」だから他人から geek と言われたらバカにされた気がするというところ。とにかく geek はいい意味と悪い意味を両立させた freak(変わり種)。

スローガンの an English geek の意味:
英語、英語と言っているわりには、英語、英語とやっているわりには、まだ英語がかなりできない人。
ネイティブの英語力との距離がわからないために自分の英語力を過大評価している人。
英語がわからない人、つまり英語を評価できない人、つまり英文のうまいへたがわからない人。

英語学習歴20年、30年、40年が20年、30年、40年の伸び悩み、頭打ちの方々もEnglish geeks。

ロッテ チョコパイ:

Chocolate coated vanilla cream sandwich pie

[問]
このキャッチコピーの誤りを訂正しなさい。

「チョコパイ」はお菓子っぽくて、おいしそうな名、英訳すると、pie は可算名詞にも不可算名詞にもなりますから Choco Pies か Choco Pie になりますが、Choco Pies が超人気の国があるんですね。どこの国だと思います。

At the same time privileged North Koreans manage to send their kids to expensive private schools in China. This unlikely elite has grown rich from the electronics, home furnishings and Choco Pies—a much coveted snack—that are funneled from China into the world's most isolated nation.

出典:TIME 2016年3月14日号 p.35

中国から北朝鮮に流入するものが3つ列挙されていますが、その1つは electronics(電子機器)、1つは home furnishings(家具)、もう1つは Choco Pies、a much coveted snack(食べたくてたまらないスナック)なんだそうです。

Japlish は Japanese と English の混成語(blend)、訳せば「日本英語」、もちろん日本英語なんて代物があるわけがなく、実は外人さんが面白半分にニッポンの tarnished English(台無し英語)の英文キャッチコピーを relish して総称的に Japlish と呼んだもの――もちろん Japlish はニッポンの英語教育上 banish すべき代物。

「チョコパイ」のキャッチコピーは以下2つの Japlish の特徴を有する典型的な Japlish。

Japlish の2大特色:
英非文法
意味不明

一見すると意味のわからないところはない、一口食べると pie が意味不明になる。

日本ではいろんなお菓子をパイと呼んでいるし、日本ではいろんなお菓子をパイと呼んでいても、それはそれでいい。しかし英語では A pie is a pie is a pie.(パイはパイでパイ以外のなにものでもない)。

チョコパイは pie ではなく pancake ―― Pancakes are pancakes are pancakes.(パンケーキはパンケーキでパンケーキ以外のなにものでもない)、チョコパイを pie で売るなら、それは一パイ食わせることになる。

訂正1:pie
→ pancakes

中にくだものや肉などを詰めて焼いたものが pie だから「中」があるのは当然、sandwich pie の sandwich は tautology(類語反復、平たく言うと冗語)。

訂正2:sandwich pie
→ pie(sandwich pie のみの訂正)

文法に関して汚点が2つ、その1点は「点」がないこと。キャッチコピーやスローガンは短くとも、特定の文の要素や動詞が省略(このキャッチコピーは This is 省略の補語)されていてもピリオドを打つ、タイトル、サブタイトル、キャプション

訂正3:終止符をつける。

2つ目の汚点も句読がらみ。

proverb と pro-verb はどこが違う? 外見はハイフン(hyphen)の有無、中味は「諺」と「代動詞」で大違い。「彼の20歳の妻」は his wife who is 20 years old で簡潔にすると his 20-year-old wife で *his 20 years old wife でも *his 20-years-old wife でもない。「チョコレートでくるんだクッキー」は cookies coated with chocolate、chocolate-coated cookies で *chocolate coated cookies ではない。

訂正4:chocolate coated
→ chocolate-coated

[問]
以下の文の old-school のハイフンがないとどうなる?

Her narrow victory was so close in some locations that organizers were left with the most old-school of tiebreakers: a coin toss. (かろうじて勝ったものの、所によってはごく僅少差で選挙組織委員は同点に決着をつける大昔からのやり方、トスで決めざるをえなくなってしまった。)

出典:TIME 2016年2月15日号 p.7

「彼女の辛勝(Her narrow victory)」の「彼女」は Hillary Clinton ――さて1語 old-school のハイフンをなくすと2語 old school になるだけでなく、形容詞 old-school が名詞句 old school に変わるだけでなく、 *the most old school なんてバカバカしくも非文法な、変わり果てた英語になってしまう。

ハイフンを取ると文法レベルで変化し、3語 the most old-school は3語 the oldest school に変わる。

訂正文1:
Chocolate-coated pancakes with sandwiched vanilla cream.

これはなんの変哲もない、変化もない、表情もない文法レベルの英文―― sandwiched を後置修飾すると、文頭 Chocolate-coated の語尾「-ed」と文末 sandwiched の語尾「-ed」が文頭·末の強調のポジションで呼応、英文に表情が出てくる。

訂正文2:
Chocolate-coated pancakes with vanilla cream sandwiched.

6語と6語の間隔:

「6語」と「6語」の違いはもちろん Japlish と English の違いだが、その間は Japlish(原文) → 文法レベルの英語(訂正文1) → 技法レベルの英語(訂正文2)の2段階のレベルアップ。「文法レベル」とは文法的に正しく、意図している意味を正しく伝えていれば満点の「和文英訳」レベルの英語。しかし英語は文法プラス技法のことば、英文ライティングも当然ながら文法プラス技法――「6語」と「6語」の間隔は Japlish と英文ライティング。

一口に cream と言っても、single cream(シングルクリーム) → double cream(ダブルクリーム) → clotted cream(固形クリーム)と乳脂肪濃度は高くなる。「vanilla cream」の cream は clotted cream、なら clotted を活用してキャッチコピーの英文濃度も高くしない手はない。「訂正文2.」に clotted をほうり込むと、「表情」はぐんと豊かになる。

訂正文3:
Chocolate-coated pancakes with clotted vanilla cream sandwiched.

以下は cat が Japlish の fish を捕まえた瞬間。

catchyなキャッチコピー:
Chocolate-coated pancakes with clotted vanilla cream sandwiched.
fishyなキャッチコピー:
Chocolate coated vanilla cream sandwich pie

「おかしな coated のお菓子」の2つ目はおかしな、おかしな、crazy な ! つきのチョコレート。

グリコ アーモンドチョコレート:

Big fried almonds coated with rich chocolate indescribably delicious!

「9語プラス感嘆符」で accomplish した文句無しの Japlish!

文法上の問題点1:
rich chocolate indescribably delicious は非文法。

chocolate を修飾する2つの形容詞 rich、delicious は同じ「性状」を示す形容詞、したがって2つの形容詞は等位接続詞 and で結ぶことになる。

indescribably delicious を delicious beyond description に言い換えると、後置修飾でも表現できる。

そもそも形容詞(delicious)、形容詞の前に副詞(indescribably)がついた形容詞句(indescribably delicious)は後置修飾させないのが文法ルール。

文法上の問題点2:
indescribably delicious の修飾先。

もしも indescribably delicious が Big fried almonds coated with rich chocolate 全体に、つまりその中核の almonds にかかっているのなら、関係詞構造で以下のように表現する必要がある。

Big fried almonds coated with rich chocolate that're indescribably delicious.

文法上の問題点3:
感嘆符(!)。

作者は indescribably delicious に感嘆符がつき「えもいえぬおいしさ!」なんだろうが、この文構造では Big fried almonds に感嘆符がつき「でっかいフライドアーモンド!」――そもこの catch コピーの造りでは pitch(売り込み)がチョコレートにあるのではなくアーモンド、ならチョコレートアーモンド!

文の整形手術

第1段階から第4段階は変形展開――ここで indescribably delicious! と同じ「2語 + 感嘆符」の how delicious! に代えると、それはまったく別の文構造のまったく別の表現展開。

Big fried almonds coated with rich chocolate は感嘆文 how delicious(they are)! の省略された主語 they の同格語。

第3段階「ダッシュでコンマは不可」の理由は、コンマだと英文1→英文2の変形展開で関係代名詞節の which are 省略に見えるから。定形動詞(finite verb)の be 動詞をいきなり省略してダッシュを打つこの大胆な表現展開は、それに見合った表現効果が生じる場合のみ可能な大技。

fried almonds(油でいためた/揚げたアーモンド)は説明の1語を要する表現―― fried almonds は一見すると roasted almonds(いったアーモンド)の誤りと思う、しかしそのまま食べるアーモンドは almonds だけで roasted almonds にきまっている、ことさら fried almonds と表現しているからには「素焼きアーモンド」の向こうを張った「フライドアーモンド」なんだろうと思い直す、しかし1語 specially(特別の方法で)を加えて specially fried almonds と表現しないと誤解を招く独り悦に入った「フライドアーモンド」になってしまう。

訂正文1:
Big specially fried almonds coated with rich chocolate—how delicious!

Big specially fried almonds は少々混雑気味、そこで Big の後にコンマ、このコンマは技法レベルで文法レベルでは誤り。

訂正文2:
Big, specially fried almonds coated with rich chocolate—how delicious!

アーモンドが丸ごと入っているアーモンドチョコレートのアーモンドの入り方には2タイプある。チョコレートの中にアーモンドを埋め込んだタイプ(pieces of chocolate with an almond in each)とチョコレートでアーモンドをコーティングしたタイプ(chocolate-coated almonds)――「埋め込み」タイプだと coated with chocolate は偽り、coated with を enfolded in に代えた almonds enfolded in chocolate(チョコレートでくるんだアーモンド)は両タイプで使える表現。

訂正文3:
Big, specially fried almonds enfolded in rich chocolate—how delicious!

fried に1語 specially を足すのではなく、1語 fried を引くとでっかいプラス! ――これで英文キャッチコピーは完成!

訂正文4:
Big almonds enfolded in rich chocolate—how delicious!

表現感覚にアピールする洗練した表情、造りの美しさ、リズム、そして技あり!

以下は cat が Japlish の fish を捕まえた瞬間―― cat の視点はアーモンドチョコレートのアーモンドの売り込みから「アーモンドチョコレート」というチョコレートの売り込みに移動。

catchyなキャッチコピー:
A dozen pieces of choice chocolate with the core of a big almond—how delicious!
(大きなアーモンドの芯ありの上等なチョコレートが12個、おいしいよ)

choice chocolate は頭韻(alliteration)、ABC 効果は、

fishyなキャッチコピー:
Big fried almonds coated with rich chocolate indescribably delicious!

「fishy」は「アーモンドチョコレート」の箱に印刷されていたオリジナルのキャッチコピー――誤りを指摘され、今度はコンマで indescribably delicious を切り離したキャッチコピーが箱を包装するフィルムに出現、これなら再度誤りを指摘されても被害は小さくて済む Japlish 対策の知恵。

その後グリコはカラメルでくるんだアーモンドが売りの新手のアーモンドチョコレートを発売、その英文キャッチコピーはもちろん箱を包むフィルムに印刷――その中で「カラメルでくるんだアーモンド」を以下のように表現、

glossy caramelized almonds

caramelized almond を直訳すると「カラメル化したアーモンド」、文字通りに解釈すると almond をカラメルに変える食品業界の alchemy(錬金術)になるが、実際はカラメルにアーモンドパウダーを混ぜてペースト状にしたもののようで、caramelised almond と成分表示したスイスのチョコレートを食べたことがある。とにかく caramelized almondは アーモンドの形状をまったくとどめない物質名詞(material noun)で視覚にアピールする glossy(光沢のある)ような代物ではない。

「カラメルでくるんだアーモンド」を売り込む英文キャッチコピーの肝心要の部分 glossy caramelized almonds がなんと English に blemish(汚点)のついた Japlish! caramelized → caramel-coated で訂正1。

訂正文1:
glossy caramel-coated almonds

「光沢のある(glossy)」は客観的で、現実的でお菓子の fantasy(空想)としっくりしない―― gleaming(やわらかく光る)は感じのよいことば、中から宝石のような gleaming caramel-coated almonds の出てくるチョコレートなんて How fantastic! アーモンドの空想が大きく膨らんで大アーモンドでダイアーモンド、ついにはダイアモンドでダイヤモンド、アーモンドがダイヤモンドに変わるファンタジーの alchemy.

訂正文2:
gleaming caramel-coated almonds

chocolate coated(ロッテ)→ chocolate-coated、caramelized(グリコ)→ caramel-coated ――グリコの誤りは致命傷、それに比すればロッテは軽傷、と言えども経済大国ニッポンの大手菓子メーカー2社が English と Japlish の識別ができない現状は、堂々と Japlish を出品する実状は、その作者がハイフンなる英語の小道具ひとつ使いこなせない現実は、日本がいかに英語小国であるかを如実に語り、かつ象徴している。

いつか、どこかで、誰かが Japlish の英文キャッチコピーを作ったというのはひとつのこと、それが英語教師と呼ばれる人だけでもごまんといるのに、誰の目にもつくところで、いつまでも展示されたままになっているというのは別のこと――確かに、日本を英語小国にしたのは日本の英語教育、これを深く疑ってみる時が来ている。

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