仮定法未来の未来は?仮定法過去であるが、ただの仮定法過去ではない仮定法

英語では未来のことを仮定法で表現する場合は主として仮定法過去、仮定法未来とは何?

仮定法未来はただの仮定法過去ではない

Should players make it on the global stage, the pressure can be enormous. Before Nishikori was beaten in the U.S. Open final by the 198-cm Cilic, Japan's Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga said that a Japanese victory would be “a historic event not only for Japan but for all of Asia.” (万一スポーツ選手が国際舞台に立とうものなら、プレッシャーは途方もなく大きくなりかねない。錦織が全米オープン決勝で身長198cmのチリッチに敗れる前、菅義偉官房長官曰く、日本の勝利は「日本だけでなくアジア全体としても歴史的出来事」となろう。)

出典:TIME 2015年11月19日号 p.32

昔は if 節 should で「万一・・・ならば」を仮定法未来と呼んでいた。仮定法未来が過去のものになった今は、should は shall の過去形だから、仮定法で過去形、まずは仮定法過去と呼んでおこう。

文法レベル:
If players should make it on the global stage,
技法レベル:
Should players make it on the global stage,

文法レベルから技法レベルへの展開は、以下の変形プロセス a. → b. →c.。

  1. If players should make it on the global stage,
  2. If should players make it on the global stage,
  3. Should players make it on the global stage,
a. → b.:
if節内で倒置(inversion)、players should make it は should players make it に変わる。
b. → c.:
If 脱落。

if節内倒置の b. の形態は実際に存在した形態で歴史的に裏付けられる。

したがって、変形プロセスは倒置 → if 脱落で、if 脱落 → 倒置の d. → e. → f. ではない。

  1. If players should make it on the global stage,
  2. *Players should make it on the global stage,
  3. Should players make it on the global stage,

if節の仮定法過去はif節の基本法(TMシステムでは直説法を改め基本法、詳しくは「英語の仮定法って、どんな mood?」)の現在形を過去形に置換変形した形態であるから、 g. → h. と変形したことになる。

  1. If players shall make it on the global stage, (基本法)
  2. If players should make it on the global stage, (仮定法過去)

players は3人称(third person)――3人称 shall は、文法書や参考書の知識では話者の意志を表す意志未来(colored future)になる。

しかし、仮定法未来なる仮定法過去「if + should」が「万一…ならば」の意味であることから判断すると、この should の現在形 shall の用法は単純未来(pure future)になる。

1人称(first person)で過去形 should は i.、その現在形 shall は j.。

  1. If I should make it on the global stage,
  2. If I shall make it on the global stage,

2人称(second person)で should は k.、shall は l. となる。

  1. If you should make it on the global stage,
  2. If you shall make it on the global stage,

1人称 I でも2人称 you でも 3人称 players でも should(仮定法未来なる仮定法過去)である以上、その基本法 shall(単純未来)は主語の人称(person)にかかわらず常に shall であることになる。

そんな単純未来 shall があるのか?過去にはあったのか?この問に答える前に以下の m. → n.、o. → p.の変形を確認しておこう。

  1. If that will happen, when will it happen?
    (もしそれが起こるなら、いつ起こるのか。)
  2. If that happens, when will it happen?
  3. When that will happen, what will change?
    (それが起こったとき、何が変わるのか。)
  4. When that happens, what will change?

「条件」や「時」の副詞節では、単純未来の未来形(shall/will + 不定詞)は動詞の現在形で代用できる文法ルールにより、例えば m. → n.、o. → p. となるから、特にその必要がない限り、副詞節の if節、副詞節の when節では、そも、単純未来の shall(1人称)、will(2人称、3人称)は出現しないことになる。

以上のことから、「if + 仮定法 should(1人称、2人称、3人称)」に対応する「if + 単純未来 shall(1人称、2人称、3人称)」の形態は、この代用ルールが確立する以前には実在していたことを意味する。

その証拠は欽定訳聖書(1611年)の中に見つかり、「仮定法現在の「現在」が原罪?」で引用した以下の部分の中に見つかる。

「古い英語」と言っても古英語(Old English)なんてどこが英語なのかと思ってしまうような大昔の英語ではなく、現代英語に直結する「古い英語」で検証しておこう。以下は欽定訳聖書(The King James Version 1611年)のルカ福音書第12章の中の1ページ(12:18~12:48)に出てくる if 節の全て。

ルカ福音書 12:26:
If ye then be not able to do that thing which is least, why take ye thought for the rest?
(そんな小さなことさえできないのなら、なぜほかのことを気にかけるのか。)
ルカ福音書 12:28:
If then God so clothe the grass, which is to-day in the field, and to-morrow is cast into the oven; how much you, O ye of little faith?
(今日は野にあり、明日はかまどに投げ込まれる身の草を神はかくも美しく装うのであれば、ましてやあなた方はなおさらのことではないか、信仰に貧しい人々よ。)
ルカ福音書 12:38:
And if he shall come in the second watch, or come in the third watch, and find them so, blessed are those servants.
(主人が夜更けに、あるいは未明に帰ってきて、寝ずに待っていたことを知れば、幸いなるかな僕たち。)
ルカ福音書 12:39:
And this know, that if the goodman of the house had known what hour the thief would come, he would have watched, and not have suffered his house to be broken through.
(このことを知るべし、もしも家の主(あるじ)が何時に盗人が来るのかわかっていたならば、見張っていて家に押し入らせはしなかったであろう。)
ルカ福音書 12:45:
But and if that servant say in his heart, My lord delayeth his coming; and shall begin to beat the menservants and maidens, and to eat and drink, and to be drunken;
(しかしその召使いが、心の中で主人の帰りは遅れると思い、下男下女をたたき、飲み食いし、酔いだすと)

5つの if 節の内訳:

3つの仮定法不定詞
  1. If ye then be not able to do that thing which is least,
  2. If then God so clothe the grass,
  3. But and if that servant say in his heart,
2つの直説法
  1. And if he shall come in the second watch,
  2. and shall begin to beat the menservants and maidens,
仮定法過去完了
  1. And this know, that if the goodman of the house had known what hour the thief would come,

if節単純未来 shall の用法が2つ見つかる。

ルカ福音書 12:38:
And if he shall come in the second watch, or come in the third watch, and find them so, blessed are those servants.
ルカ福音書 12:45:
But and if that servant say in his heart, My lord delayeth his coming; and shall begin to beat the menservants and maidens, and to eat and drink, and to be drunken;

2つの if節の主語(he、that servant)はいずれも3人称である。

以下の一連の変形展開は、単純未来 shall に起源する仮定法未来なる仮定法過去 should の技法レベルの展開である。

  1. If players shall make it on the global stage, pressure can be enormous.
  2. If players should make it on the global state, pressure could be enormous.
  3. If should players make it on the global stage, pressure could be enormous.
  4. Should players make it on the global stage, pressure could be enormous.
  5. Should players make it on the global stage, pressure can be enormous.(原文)

「仮定法未来の未来は?」というタイトルながら、学習テーマは大きく「仮定法未来が語る英語」「仮定法未来が証する英語の本質」――その狙いは、英語の真髄に触れ、英語のスピリットを感取していただくこと。

変形の第1段階:q. → r.。

ただたんに条件節(protasis)の shall が仮定法 should、帰結節(apodosis)の can が仮定法 could に変わったということではない。

たんなる文法レベルの基本法(直説法)→ 仮定法の変化ではなく、if節単純未来 shall は消滅したにもかかわらず仮定法 should は生き延びた歴史的事実に注目する必要がある。

つまり、文法レベルで shall は死に絶えたが、技法レベルで should は生き続けたと洞察する必要がある。

英語が文法プラス技法のことばではなく、文法だけのことばであったら、当然、shall の死は should の死を伴う。

変形の第2段階:r. → s.。

まず、1つ問を出すことにする。

[問]
倒置(inversion)を用いることで以下の英文を変形しなさい。
  1. Things won't change until we make that happen.
    (それを実現するまでは事態は変わらない。)

この問に対して従属節の until節を倒置文に変える方がいるだろうか?

w. 文は非文法ではないが一風変わった英語。

  1. Things won't change until do we make that happen.

until 節の文意を強めるなら、普通に強調の助動詞 do を使って x. 文。

  1. Things won't change until we do make that happen.

答は、もちろん主節が倒置文の y.。

  1. Not until we make that happen will things change.

r. → s. の変形で特筆すべきことは、主節ではなく、従属節が倒置文に変わったことである。

倒置は主要な強調技法の1つであるが、if節内倒置は特別に技法色の濃い倒置と言える。

if節内倒置は、文法レベルの仮定法から技法レベルの仮定法への飛躍と理解する必要がある。

変形の第3段階:s. → t.。

If should players make it on the global stage, の If が脱落すると Should players make it on the global stage, になるが、この if省略はいかなる文法ルールによって可能になるのであろうか?

と問うならば、そんな文法ルールは存在しない、と答えることになる。

だったら非文法になるのだが、実際に、現実に、普通にかような表現が存在するのである。

係る英語の超文法現象に注目し、「技法の文法超越」と総称したのはTMシステムが初めてである(「英語のライティング、ライティングで英語」の「英語の超現象:技法の文法超越」参照)。

要するに「英語は文法プラス技法のことば」なのである。

この文法を超越した接続詞(if)無しの従属節(should節)を文法レベルで正常化すると、should節を1つの構文、変形(倒置、if省略)生成した独自の構文と評価することになる。

そうすると、この変形構文に固有の名称を与える必要がある。

変形の第4段階:t. → u.。

その名は?

しかし、その前に変形を最後まで見届けておこう。

最後に変わるのは帰結節(条件節の主節)――仮定法 could が基本形 can に変わる。

このことは、文法レベルで should節は仮定法の形態のまま仮定法から脱出したことを意味する。

そうすると、この構文化した強調の should節を何と呼ぶことになるのか?

それは自明――TMシステムは「should型強調構文」と命名し、英語に40以上ある強調構文(emphatic construction)の1つに数える。

should型強調構文の用法に関して1つ注意すべきことは、以下の引用文の should the other guy win のように、後置の should節の前にコンマを打たないこと。

Both sides are digging in for a gloomy slugfest, marked by depressed turnout and apocalyptic warnings about the fate that awaits the nation should the other guy win. (両陣営とも、渋る有権者の出足と、万が一にも相手が勝つようなことになればそれこそ国を待ち受けている運命は存亡の危機といった警告とが特色の陰うつな選挙戦に備えてせっせと足場を固めている。)

出典:TIME 2024年4月8日号 p.26

  1. if the other guy should win
  2. should the other guy win(原文)

今日でも、文法関係の学習書用例は z. の「if + should」の形態であるが、今日では「if + shall」同様「if + should」の形態も廃れている。

ただし、if anything should happen(もしも何かあったら)のような慣用化している表現は今日も健在、その強調表現 should anything happen と共存。

  1. if anything should happen
  2. should anything happen(should型強調構文)

人称を問わない条件節(if節)の基本法単純未来 shall の用法が廃れた後も shall は仮定法 should として受け継がれ、条件節内倒置という特異な技法展開から、さらに技法の文法超越で if 脱落、if節は should節に変わり、さらに、最後的に帰結節が仮定法から基本法に変わり、should節はshould型強調構文として自立――さらに、「if + should」は過去のものとなり、技法の文法超越で誕生したshould型強調構文一本化の「技法の文法征服」に帰着した。

歴史という試金石で試され、磨かれた should型強調構文に英語の本質が結晶化している。

「仮定法未来の未来は?」すでに定まっている。should型強調構文の輝きが見えるなら、あなたの英語の未来もバラ色。

TMシステムの3大英語理解:
英語は文法プラス技法のことば。
英文法の中核は変形。
英技法の中核は変形技法。

時は今、TiMeはTMシステム。 Now is the time to spread your English wings.
Spring into action with the TM System.

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どだい、土台が違う

木造平屋建ての土台でビルは建てられない。3階ビルの土台に30階高層ビルは建たない。英語ができるといっても、いわば平屋の英語力と、いわば高層ビルの英語力の違いがある。

どこまで英語力を伸ばせるか。
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