ライティング実習 英語の1センテンスで語る英語
「ライティング実習」は文法プラス技法プラス句読法のライティング学習を通じて「英語」を語る an “English” storyteller――1つ1つの「ライティング実習」が1つ、1つ完結した「英語」のお話になっています。
ストーリーに主題があるように「ライティング実習」に学習テーマがあり、「英語の1センテンスで語る英語」の学習テーマは語句の「接続」と「配列」――また、英語の3感覚(表現・構造・文法感覚)がどのように働いているかを確認していく狙いもあります。
Broke and lonely, the oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside. (そのオリガルヒは、2013年、イングランドいなかの大邸宅で、破産し孤独に死去した。)
出典:TIME 2024年12月9日号 p.26
- [問1]
- Broke and lonely, はどこに接続するのか?
- [問2」
- Broke and lonely, の文の要素は何か?
ネイティブに Broke and lonely はどこに接続するのかと問えば、Broke and lonely が意味的に結びつく the oligarch と答えるでしょうね。
では、どんな文法の仕組で Broke and lonely が the oligarch にかかるのかとさらに問えば、ネイティブは黙ってしまうでしょうね。
文頭の Broke and lonely が the oligarch に接続するということは、Broke and lonely が the oligarch の the と oligarch の間に飛び込み the broke and lonely oligarch になれるということであり、逆に原文の Broke and lonely, は以下の文の主語 The broke and lonely oligarch の broke and lonely が文頭に飛び出した形態であるということです。
- The broke and lonely oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside.
こんな「飛び込み」や「飛び出し」は文法上の不可能であり、文法風味の冗談!
Broke and lonely, 同様の表現に何度も何度も出会うことで「文頭形容詞 + コンマ」が表現パターンとして頭の中に入っているネイティブはこんな冗談を飛ばすゆとりがありますが、私たちノンネイティブは「文頭形容詞 + コンマ」の文法と技法を Broke and lonely, に出会った今ここできちんと理解しておく必要があります。
分詞構文(participial construction)を介さずに Broke and lonely, を接続させる方法はありません。
ですから、Broke and lonely, は分詞構文ということになります。
省略されている現在分詞 being を補うと分詞構文の形態の次の文になります。
- Being broke and lonely, the oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside.
Being を補うと分詞構文の形態になるが、分詞構文の形態になるように Being を「添加」したのではない――という点は、実のところ、立証を必要とします。
Broke and lonely, が分詞構文であることの立証:
- 第1段階:
- 形容詞(adjective)には叙述用法(predicative use)と限定用法(attributive use)の2用法しかなく、叙述用法の形容詞の文法機能は補語(complement)であり、限定用法の形容詞の文法機能は修飾語(modifier)である。
- 第2段階:
- Broke、lonely は形容詞であり、名詞語句を修飾していないから、Broke and lonely は補語である。
- 第3段階:
- 補語は動詞が形成する文構造の主要素の1つであり、動詞から独立して存在し得ないから Broke and lonely, を補語とする動詞は省略されていることになる。
- 第4段階:
- 補語を必要とする動詞の中で、特定の構文で省略できるのは be動詞である。
- 第5段階:
- be動詞の形態は不定詞 be、現在分詞 being、過去分詞 been、現在時制 am、are、is、過去時制 was、were、動名詞 being の9形態である。
- 第6段階:
- 動詞には必ず主語がある。主節の主語は the oligarch で時制は過去時制であるから、可能な「主語 + be動詞 + 補語」の形態は次のAかBであり、Bは分詞構文の形態である。
- A:He was broke and lonely,
- B:He being broke and lonely,
- 第7段階:
- He was broke and lonely, は節であり、主節に接続するためにはBに接続詞 while を加えたCの形態を必要とする。
- C:While he was broke and lonely,
- 第8段階:
- しかし、While he was はその形態のまま省略できないから、原文 Broke and lonely はCから生成した形態ではない。
- 第9段階:
- 一方、Bが分詞構文の場合、主節の主語 the oligarch と同一である主語 He は省略しなければならず、また現在分詞 being の省略は任意であるから、He も being も省略できる。
- 第10段階:
- He being を省略すると、原文 Broke and lonely が生成するから、Bは分詞構文である。故に分詞構文 He being broke and lonely, の He being を省略することにより変形生成した原文 Broke and lonely は分詞構文である。
- While he was broke and lonely, the oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside.
- Being broke and lonely, the oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside.
- Broke and lonely, the oligarch died in 2013 at his mansion in the English countryside. (原文)
副詞節で主節の died を修飾する while節を分詞構文に変えた現在分詞句 Being broke and lonely も副詞句で died を修飾することになります。
そうすると、Being broke and lonely, の Being 省略で生成した形容詞句 Broke and lonely も died を修飾していることになる――となりますが、Being の補語で形容詞句の Broke and lonely が同時に修飾語で died にかかる副詞句でもあることに、文法論理上、矛盾はないのでしょうか?
あなたは「英文法の中核は変形」の「変形」抜きの英語教育しか受けなかったから、1つの語群は1つの文の要素としてのみ機能すると思い込んでいるでしょう。
しかし、変形生成した結果、1つの語群が2つの文の要素として機能するようになる場合があるのです。TMシステムは「1語句2文の要素」を「二重文の要素」と呼びます。
- I want for you to do that.(S + V + O)
- I want you to do that.(S + V + O +C)
(そうして欲しい。)
d. の for you to do that(目的語)の for 脱落で e. が生成。
you の文の要素は?もちろん want の目的語――ですが、もちろん不定詞 do の主語でもあります。
その証拠に、you 主語、do 動詞、that 目的語で do を受動態にすると f.文が生成。
- I want that to be done by you.
e.文の you は二重文の要素。
- e. you の第1文の要素:want の目的語。
- e. you の第2文の要素:do の主語。
同様に f.文の that も二重文の要素。
- f. that の第1文の要素:want の目的語。
- f. that の第2文の要素:done の主語。
c.文の Broke and lonely も二重文の要素。
- 第1文の要素:現在分詞 being の補語。
- 第2文の要素:died を修飾する修飾語。
died に接続する Being broke and lonely の being 省略で変形生成した Broke and lonely も当然 died を修飾します。Broke and lonely が修飾語(第2文の要素)として機能しないのであれば、 Being 省略は非文法になります。
e.、f. のいわば「見える第2文の要素」に比すれば、c. の「見えない第2文の要素」はぐんと精妙――文法レベルの分析からも、分詞構文なる変形技法が接続の妙技であると理解できるわけです。
- 二重文の要素の法則:
- 二重文の要素は、変形によってのみ生成する。
だから、そこに二重文の要素があるということは、そこに変形があるということ。
以上、問1、問2の解説完了!
– 続く –